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大学教育への信頼

前回の記事で紹介したFrom Violence to Caring study programmeのWeb コースが忙しくて、しばらく更新できませんでした。

フィンランドの大学は日本と比べて一つ一つのコースの難易度が高いと思います。そのうえ、学生の積極的な参加が求められる授業が多く、プレゼンテーションや議論などの準備が大変です。それでも、多くの授業は学生の出席率が高く、授業中に居眠りをする人もあまり見かけません。

こんなことを言うと、「フィンランドの学生は真面目でよろしい。それに比べて日本の学生は…」と言い出す日本の先生がいるかもしれませんが、私はフィンランドの学生が真面目に勉強するのには構造的な理由があると思っています。フィンランドの大学は以下の理由で、学生に信頼されるものになっていると思います。

①実学中心で学生の将来のためになる

フィンランドでは、大学の勉強が仕事で役に立つように組まれているプログラムが多いと思います。学生は勉強したことが自分の将来のためになると思えるので、モチベーションが高いのだと思います。また、各学生にインターネット上の学習スペースが用意され、自分の書いたレポートや先生からのフィードバックなどをポートフォリオとして蓄積できるようになっています。ポートフォリオは仕事を探す際に「大学でこういうことができるようになった」と証明するのにも利用できます。

もちろん、直接仕事にはつながらない分野もありますが、多くのプログラムには単位認定されるインターンシップが組み込まれており、大学の勉強は大学の勉強、仕事の準備は仕事の準備として並行して進められるように設計されているようです。

②無償の教育をみんなで良いものにしていこうと思う

フィンランドでは、託児所から大学院まですべて無償で提供されています。つまり、国が税金から支出しています。多くのフィンランド人は、スマートな税制によって無償の教育を実現していることを誇りに思っているように感じます。そのため、その無償の教育を、教員や学生がみんなで良いものにしていこうという意識を持つようです。つまり、「こっちは金を払ってるんだから、授業に出ようが出まいが勝手だろ」という発想が湧かないということです。

③学生を自立した個人として扱う

フィンランドの大学では、先生が学生に対して上から一方的に教育するという雰囲気があまり感じられません。多くの授業では学生が主体的に参加することが求められ、グループワークなどを通じて学生同士で助け合って成長するように促されます。テストの日程なども複数の日から学生が選択できるようになっており、他の授業や予定と調整して、自分の勉強を自分で管理することが期待されています。授業の最後には、学生が授業を評価するフィードバックの提出が求められます。また、高校卒業後または兵役修了後にすぐに大学に進学する人の割合が一番高いとは思いますが、仕事の経験のある人や育児が一段落してから大学に入る人など、いろいろな人がいるので、個が尊重されます。

④「大学時代しか遊べない」わけではない

多くの場合、フィンランドでは就職してからも「仕事漬け」になることなく、自分の時間を持つことができます。基本的には1日8時間の法定労働時間が守られ、超過した場合には、残業代が支払われるか、その分他の日に休みが取れます。また、約1か月の夏休みが取れます。つまり、大学卒業後も仕事と生活(趣味)を両立できます。そのため、一部の日本の大学生のように、大学時代が最後のチャンスとばかりに遊ぶ必要がなく、真面目に勉強に取り組めるのだと思います。


以上です。
日本では「学生」という言葉が、「どうせろくに勉強もしないで遊んでるんだろ」とでもいうような侮蔑的な意味をこめて使われることがあるように感じます。たしかに、学生本人の能力や性質に問題がある場合もあると思いますが、学生が信頼して勉強できるような制度になっていないということもあるのではないでしょうか。
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